全学23クラスの教育品質をどう揃える?徳島大学が挑んだMDASH対応と電子教科書による教育DX
国立大学法人 徳島大学さま
四国で唯一、医学・歯学・薬学の各学部を擁し、多様な専門性を持つ学生が学ぶ徳島大学。同大学では、内閣府・文部科学省・経済産業省の3府省が連携した国の取り組みである「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(MDASH)」の展開において、ユニークな取り組みを行っています。全学必修として導入した独自の電子教科書の活用と、その先に描く未来について、同大学での取り組みを牽引する大薮先生にお話を伺いました。
大薮先生、本日はありがとうございます。まず、 数理・データサイエンス・AI教育プログラム(MDASH)について伺いたいのですが、徳島大学様ではどのようにMDASHに対応されたのでしょうか?

大薮先生(以下、大薮):徳島大学ではもともと10年ほど前には「情報科学入門」という授業で、Eメールやインターネット、WordやExcel、PowerPointなどの指導が行われていました。その後、2019年に国が「AI戦略2019」を立ち上げ、データサイエンス教育に力を入れ始めたことをきっかけに、我々もこの授業をMDASHに対応した形に変更しました。Society 5.0に向けたデータサイエンス教育の重要性はすべての教員が理解していますので、あとはそれを学生にいかに理解してもらうかという段階だと思っています。
実際の学生のみなさんの反応はいかがですか?

大薮:2026年度から、すでに高校で「情報Ⅰ」を学んだ学生たちが入学してきていますが、各高校によって「情報Ⅰ」での学習の内容が多様化しています。また、学生側にもそれぞれの強みや習熟段階に応じたバリエーションが見られます。例えば幼少期からPCに親しみ、他の学生が1時間かかる課題を10秒でこなすような学生もいれば、文系の学生の中には「大学でデータサイエンスを学ぶとは思っていなかった」と驚く声もあるようです。

デジタルネイティブ世代と一言でいっても個々で習熟のペースが異なるので、MDASHに対応した教育で最低限のラインを揃える必要があるわけですね。そうした中で、具体的にはどのような課題に直面され、どう乗り越えられたのでしょうか?

「改訂新版 情報科学入門」 技術評論社刊
大薮:本学には、文系・理系にまたがる多様な学部があり、それぞれが高い専門性を生かした教育・研究を展開しています。MDASHに対応する際、当初は各学部・コースによって授業内容が異なり、統一的な教育基盤をつくることに難しさがありました。「情報科学入門」は年によって異なりますが、基本的には23クラス展開という大規模な授業です。多くの先生方にご協力いただく一方、例えば医学部の先生は医学統計を、文系の先生方は基礎的な内容を中心に教えるなど、それぞれの専門やコースに傾斜した講義になりやすい傾向がありました。これをすべてMDASHに沿うよう整え直すにあたり、先生方に「この内容を教えてほしい」とスムーズに共有すべく、オリジナル教科書である『情報科学入門』を執筆、出版しました。
大藪先生をはじめ徳島大学の先生方で執筆された『情報科学入門』はMDASHのリテラシーレベル5項目に完全準拠しています。
この一冊をテキストとして授業を行えば、MDASHの認定基準を満たせるというわけですね。

大薮:そうですね。コンソーシアムのモデルカリキュラムに従いつつ、これさえあればMDASHが取得できるという内容を一冊にわかりやすくまとめました。その根幹には、教科書を通じて授業内容のレベル感を揃えたいという考えがあります。例えば統計の部分なども本当にしっかり書いてしまうと、とても全15コマの授業では収まらなくなってしまいます。そのため、ここでは必要なレベルを見極め、内容を精査しました。教科書とは、先生方に「これをこのように教えてほしい」というガイドラインの側面もあるのかもしれません。また、同じ教科書を使ってレベルを均質に整えても、教える側による授業の個性はしっかりと保たれています。
その教科書を「紙」ではなく「電子」のみで展開された理由を教えてください。

大薮:理由は主に検索性とアップデートのしやすさ、そしてプログラミング教育との親和性です。特にプログラム言語のコードをコピー&ペーストで利用できる点は、学生側にとって学びやすさに直結します。また、売り切れなどのトラブルを防げるのもメリットですね。すべての教科書がデジタル化されれば、学生もタブレット1台をもって授業を受けられるようになると期待しています。
紙の教科書を何冊も持ち歩く必要がなくなれば、学生の負担も減りますよね。実際の授業では、電子教科書をどのように活用されていますか?


大薮:私の場合は、オンデマンド授業などで教科書をベースに説明を行い、学生が必要に応じて参照できるようにしています。また、EDX UniTextでは、学生の教科書の利用状況を学修ログとして確認できます。現在は、プライバシーに十分配慮しながら、授業全体の利用傾向や学生の学修ペースを把握し、学修が滞っている兆候がないかを早期に捉えるための活用を進めています。本授業は全学必修科目であり、多くの学生が毎週継続して受講するため、大学での学修や学校生活に困難を抱えている学生に気づくための一つの手がかりにもなり得ます。学修ログを単なる受講状況の確認に用いるのではなく、必要に応じて学生への声かけや適切な支援につなげることをめざし、その有効な活用方法を検討している段階です。
今後の展望をお聞かせください。

大薮:リテラシーレベルの上級にあたる、応用基礎レベルの拡充を課題としています。また、今後は生成AIとの向き合い方も重要だと感じています。AIは便利なツールなので基本的には積極利用を認めていますが、専門的な知識についてはまだ不正確な部分もあります。自分の専門性を磨いて正しい知識を身につけ、ツールとして使いこなしつつも、AIの回答を鵜呑みにはしない姿勢を学生に伝えています。
結び
徳島大学の取り組みは、単なるデジタル化にとどまらず、教職員と学生の双方にとって「最適化された学びの場」を創出しています。MDASHという国の旗振りを、独自の教育設計と電子プラットフォームによって実現したその事例は、今後の教育DXを推進するモデルケースになるでしょう。
※サービス導入効果は、ご利用者さまの声に基づくものであり、お客さまのご利用状況により、効果は異なります。
※記事の内容は、2026年8月時点のものです。